鍛造の歴史 世界編
鍛造の生い立ち
6000年前 | エジプトやメソポタミアで自然産の金、銀、銅などの加工(鍛造)されたものがあると言われています。 |
5500年前 | メソポタミアの遺跡で鋳型や銅の斧が出土し世界最古の鋳物と言われています。 |
4000年前 | ようやく高温を手に入れた人類は、鉄を使い出しました。鋳造は小アジアの人達が始めたと言われています。 |
2500年前 | 中国に鉄製農具が普及。 |
1700年前 | 弥生時代、日本にようやく大陸から技術が伝来し、弥生時代後期から青銅の鋳造品や鉄の鍛造品が現れています。 |
鍛造の始まりは人類が文字を知る以前であり、遺跡の出土品からその年代が推定されるのみです。
「鉄時代」を迎えた地域は農耕その他の生産性が飛躍的に向上し、ひいては文明の発展を促し、古代国家成立の重要な動機になりました。そして人類は 数学、科学に目を向け、文学、哲学にも関心を持つようになりました。
鍛造の歴史 日本編
日本の鍛造の生い立ち
古事記や日本書紀によると、4世紀当時、親交のあった百済 から応神天皇の要請により、卓素という鍛人(鍛造技術者・鍛冶師)が来朝し、韓鍛冶の法を伝えたとあります。
その後、新羅が百済に侵入し日本は百済救援に出兵したが及ばず、任那の日本府も新羅に滅ぼされ、百済からは大量の人々が日本に移住し、「韓鍛冶」の帰化も相次ぎました。
7世紀前半の元正天皇の頃には、韓鍛冶は近江をはじめ諸国に集落を造り、韓鍛冶百島など127人に姓を賜っています。鍛造の技術はこれらの人々によって広められました。
初めは輸入していた原料の鉄も、やがて国内で砂鉄や磁鉄鉱などから製鉄が出来るようになりました。 また、弥生時代は小さな槍鉋や鏃のようなものしか作れませんでしたが古墳時代には鎌や刀など大型の鍛造が出来るようになっています。
8世紀初頭の大宝律令の軍防令によると、兵士は武器のほか鍬、斧、小斧、鎌、金箸などの鍛造した農具を持たねばなりませんでした。
この頃、イナゴの被害や風害が相次ぎ、税収は大きく落ち込みました。その後も度々凶作に見舞われ、鍛造農具の量産は緊急事でした。
また、度々の戦乱に刀剣などの武器も、平安期から非常に発達し、その技術は鋏、包丁、剃刀などの日用具や工作用刃物鍛冶の発達を促しました。
16世紀に鉄砲がポルトガルから伝来したとき、短期間にその製造技術を獲得したのも、それまでの鍛造技術が発達していたことを示しています。
金敷と手鎚で鍛造加工していた時代から、機械による鍛造が始まったのは、はっきりしませんが明治維新前の頃と言われています。
その後、生産量は徐々に拡大し、戦争中にはピークに達したが、まだ生産性は先進国に比べて格段の差がありました。それも敗戦により壊滅的な打撃を受けました。そして我々日本人はその絶望的といえる状況から立ち直り、品質、生産性の両面で、世界のトップクラスとの肩を並べるようになりました。
鍛造業の歴史と課題
1)我が国の鍛造の歴史
鍛造の歴史を概観すると、1950年代は欧米技術の導入期で、1960年代はシステムの日本化期、1970年代は需要拡大期、1980年代は本格需要期で量を追い、質を求めた時代、1990年代はインテリジェントフォ-ジの時代(鍛造の情報化)、コストダウン、切削品の鍛造化の時代でした。そして、21世紀は質+付加価値、IT化、技術の特長化の時代です。
外国技術の導入から始まった我が国の鍛造業界ですが、気がつくと現時点では技術面で世界のトップを走っています。従って、最近の精密化によるコストダウンで、インテリジェント化、IT化でも対応するために手本のない時代になっています。これらを具現化するには、ハ-ド面、ソフト面で今までにない技術が要求されています。このため、新しい鍛造加工のための研究開発が重要になっています。
2)国際競争への対応
電力・原材料・労務コスト等の製造コストが高い我が国の製品・組立部品メ-カ-は、高精度部品を速く、安価に製造しなければ国際競争には打ち勝つことができません。
鍛造は機械産業を支える重要な生産技術です。競争力のある鍛造品を生むには、長年の経験に加え、多くの加工関連先端技術や自動化技術、検査技術、目的にあった良質な鍛造素材の開発、鍛造品の精度と寿命を左右する型材料の開発、加工技術及び熱処理と被膜処理、最適な潤滑システムの開発など周辺技術を含む総合システムを構築できる環境が必要です。客観的に考えて我が国がこの意味で高度鍛造品を生産するのに最も適した環境にあります。
鍛造加工は、経験(熟練)と勘が支配する世界であり続けました。しかし、今日部品の統合による複雑形状の鍛造品への対応、自動車のエンジン出力向上や運転性能向上の要求、軽量化への要求など、ますます加工上厳しい要求が求められています。これらの要求に鍛造業として対応していかないとその存立すら危ぶまれることにもなり、そのためにも鍛造プロセスを科学的に検討する必要が出てきました。
コスト競争力を得るには鍛造プロセス全体を見ての技術改善が必要です。従って、鍛造品設計技術や加工工程設計技術のみならず、型技術、材料技術、鍛造周辺設備技術などの総合的開発能力が競争力と関係してきます。
鍛造技術の改善・進歩は、日々の技術改善努力や問題点の把握を行ない、 これらをデ-タべ-ス化し、設計の改善につなげることによって、鍛造品の高精度化の推進、ネットシェイプ成形法の開発、鍛造品欠陥の防止、コスト低減などを推進することができます。
ユ-ザ-は、鍛造品の特徴である高い靭性と強度を生かし、新しい製品を開拓することによって、組立部品の性能を向上でき、エネルギ-の節約、安全性の改善及びコストの削減につなげられます。
鍛造品は、最も強度に優れ、成形度が高く、安価で、安心して使用できるため、機能部品として欠かせない機械工業の基礎部品であるのです。